ベルリン事情

欧州最大の起業都市「ベルリン」で白熱!3社のオープンイノベーション事例

最近、変化の激しい社会環境に適応する手段として「オープンイノベーション」という言葉をよく聞いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

オープンイノベーションとは社内のリソースを活かしつつも社外の人材と協業し、今までできなかった新しいチャレンジを促進する取り組みですが、実際にどのように社外と協業していけばよいのか困っているという声も聞かれます。

⇛関連記事 NewsPicks取材記事(大企業の挑戦における「イノベーションのジレンマ」を解決する方法)

今回は、日本よりもオープンイノベーションが進む欧米の、特に主要な産業や国民性が似ているドイツの企業が実践するオープンイノベーション事例を3社ご紹介します。

日本の「オープンイノベーション」は、欧州から遅れを取っている

欧米企業と比較すると、日本企業のオープンイノベーション活動の実施率は欧米企業が全体の78%に対して、日本企業は47%と大幅に遅れを取っています。

特に日本の主要産業である「製造業」においては、オープンイノベーションという形で外部リソースの活用が増加傾向にある企業は3割強にとどまっています。

*参考文献:企業におけるオープンイノベーションの現状と課題、方策について(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/innov/dai4/siryou2.pdf)|経済産業省

また、スタートアップとの協業という文脈では、欧米都市で、外部連携パートナーにおけるスタートアップの比率が約25%~50%*を占めているのに対して、日本企業では10%前後と、大手企業とスタートアップの連携も欧州ほど盛んではありません。

*オープンイノベーション白書(第二版)の概要(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/pdf/007_03_00.pdf)|国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

EU最大級のスタートアップ都市「ベルリン」でオープンイノベーションが進む

今回は、オープンイノベーションで日本より先行している欧州の中でも、日本と同様に製造業が盛んで、勤勉な国民性が類似しているドイツ・ベルリンの事例を見ていきたいと思います。

日本ではあまり知られていませんが、ベルリンはEU最大級のスタートアップ都市でもあります。
スタートアップの界隈の共通語はもちろん英語。およそ17万社のスタートアップが存在し、ベルリン人口の357万人のうち約20%の65万人がスタートアップに従事しています。

また、スタートアップに、年間39億ユーロ(日本円にして約4,620億円)も投資されており、毎年500社以上のスタートアップを輩出するスタートアップエコシステムが形成されています。

⇛関連記事 世界から注目を集めるスタートアップ都市「ベルリン」と、その理由とは?

しかし、ドイツにおいても大企業では、日本企業と同様に、新規事業を生み出そうとしても意思決定に時間がかかってしまうことが課題となっています。

そんな中、ベルリンのスタートアップと手を組んでオープンイノベーションを起こすためにベルリンに拠点を置くドイツの大手企業が増えています。

ベルリンで新規事業プロジェクトを進める大手企業の3つの事例

ベルリンに拠点を置き、オープンイノベーションを起こすことに成功しているドイツ大手の企業事例を3つ紹介します。

事例①:バイエル

製薬会社のバイエルは、ベルリンで起業家を輩出するために「Grants4 Apps Berlin」という100日間で複数の起業家とそのチームがアイディアや技術を競うプログラムを開催することでオープンイノベーションを生み出しています。

「Grants4 Apps Berlin」ではバイエルの研究者が共同実験を行えるようにコワーキングスペースやラボスペースを開放するなどすることで、生命科学をはじめとする技術系スタートアップにバイエルのリソースを提供しています。

これまで、プログラムに参加したチームは、画像解析のスタートアップ「JigLabs」、除草剤の開発スタートアップ「Targenomix」、在宅で体液をチェックできるサービスを提供する「Bitome」など、革新的な技術を強みとするユニークなスタートアップの面々です。

いずれも、優秀な科学者や技術者など専門家を抱えるスタートアップであり、彼らのアイディアと技術に加えて、バイエルがもつ研究室やノウハウを活用することで、さらに実用に近い製品プロトタイプをプログラム期間中に開発します。

そして、プログラムに参加するスタートアップのうち、事業的なシナジーがあるスタートアップには、10%以内程度の株式と引換えに、バイエルが出資し、共同実験や業務的なアライアンスを通じて長期的な連携を進めていきます。

出資を受けたスタートアップは、バイエルの持つの創薬に関する専門的知識、高額な専門機器、技術、これまでに作り上げてきた顧客網を活用することができ、一方バイエルは、スタートアップの持つ革新的な事業とスピード感を取り込むことで、オープンイノベーションを実現しているのです。

事例②:ダイムラー

ダイムラー社は「メルセデス・ベンツ」のシリーズで知られる世界的な自動車メーカーです。

昨今、自動車に関わる社会のあり方やテクノロジーは大きな変革期を迎えています。

若者の間では、高級自動車を所有することにステータスを感じなくなり「所有から使用」という価値観の変化が生まれています。さらに、テクノロジー面では、自動車とインターネットが接続されたコネクテッドカーや、AIを搭載した自動運転などが注目されています。

そうした環境変化に適応するため、ダイムラー社が打ち出した中長期の経営ビジョンが「CASE(ケース)」です。

「CASE(ケース)」は4つのキーワードの頭文字からなるビジョンで、オンラインとオフラインの相互接続性を高める「Connected」、自動走行を目指す「Autonomous」、所有から使用へとシェアの概念を取り入れようとする「Shared & Services」、そして環境に配慮した電気自動車を意味する「Electric」の4文字で構成されています。

このビジョンを実現する手段として、ダイムラー社は、2017年にスタートアップとのオープンイノベーションやアクセラレーションプログラムを提供する子会社「Lab1886」をベルリンに設立しました。

そして、Lab1886のプロジェクトのひとつとして「chark」という、オンラインで購入したモノを駐車場に停めてあるユーザーの車に荷物をデリバリーするサービスを提供しています。

「chark」は4つのビジョンのうち「Connected」に該当し、オンラインとオフラインがシームレスに結びつき車の利便性を高めるサービスになります。

さらに、「Shared & Services」の事例としては、Uberのドイツ版であるオンデマンド・ライドシェアのスタートアップ「CleverShuttle」に対して出資をおこなっています。

このようにダイムラー社は、顧客の価値観や、社会的なテクノロジーの変化に対応するべくいち早く先進的な中期ビジョンを打ち立て、具体的な施策としてベルリンに拠点を作り、スタートアップを巻き込みながら新規事業にチャレンジをしているのです。

事例③:ボッシュ

ボッシュは、ドイツを本拠地とする自動車部品と電動工具のメーカーです。
ダイムラー社と自動運転の開発で連携をしており、駐車場など限定された無人エリアにおいて無人運転ができる水準できるまでになっています。

ボッシュは、オープンイノベーションを生み出す拠点として、ベルリンに「ボッシュIoTキャンパス」を設立しています。

IoTキャンパスでは、約300人の従業員が、モノのインターネット化であるIoTに関連するプロジェクトに取り組んでいます。

またIoTキャンパスでは、ボッシュのリソースを恒常的に外部に公開しており、ビジネスモデル開発のワークショップの開催、プロトタイピングの作成、実証実験の環境の提供、IoTに関する勉強会、企業向けコンサルティングなど、多岐に渡るサービスを提供しています。

また、外部のコミュニティやスタートアップ向けにコワーキングスペースや会議室などを開放しています。

さらにボッシュは、ベルリンの起業家を支援するために「Startup Harbor(スタートアップハーバー)」というインキュベーションプログラムで、起業家への包括的なコーチングと、ボッシュがもつネットワークから顧客や投資家の紹介をおこなっています。

スタートアップハーバーのプログラムに参加している企業には、ブロックチェーン技術を用いることで、一つのスマートフォンで、認証された車両や建物などにアクセスすることができるセキュリティーソフトウェアを開発する「YPTOKEY(https://yptokey.com)」などがあります。

他にも、風力発電システムやドローンなどのシステムの稼働状況をクラウドで管理し、故障を自動的に予測してくれるIoTプラットフォームを提供する「annea.ai(https://annea.ai/#products-header)」などのスタートアップなどIoT関連のスタートアップを支援しています。

このように、ボッシュはIoTに特化したプロジェクト拠点とベルリンの技術系スタートアップを積極的に支援するプログラムを提供することで、現地の起業家と共に新しい事業の創出を実現しています。

スタートアップが集まる都市ベルリンで、スタートアップへのリソース提供とプログラムをおこなうことでオープンイノベーションを起こす

本記事では、日本と同様に製造業や研究開発に強みを持つドイツの大手企業のオープンイノベーションの事例を紹介しました。

今後の企業競争に生き残るためには、テクノロジーの変化や価値観の変換を感じ取り、変化に適応していこうとする姿勢が大切です。

そして、次にそれを実行していく実行力が重要です。コワーキングスペースの提供、アクセラレータープログラムの開催、スタートアップへの資金提供とアライアンスなど、できることは少なからずあります。

バイエルやダイムラー社はこれらのプログラムを実行するためのチームと拠点をスタートアップが集積する地ベルリンに置き、実行しています。

もし、ベルリン企業のオープンイノベーションの事例をもっと詳しく知りたい方や、現地のスタートアップ企業で社会人インターンシップを通じて学び取りたいとお考えの企業担当者様がいらっしゃいましたら、JETROのベルリンパートナーであるbistream/バイストリームまでご相談ください。

bistreamに相談する