今回、NewsPicksを運営する株式会社ユーザベース主催の「社内挑戦者を生み出す組織風土の作り方」に参加してきました。
講演者は、株式会社電脳交通の北島 昇氏、ONE JAPANの山本 将裕氏のお二人。
北島氏は、IDOM(旧:ガリバーインターナショナル)で、新規事業・人事担当の執行役員として事業創出と企業文化改革に携わり、2019年3月に取締役として徳島の株式会社電脳交通の代表として業界変革・地方活性化に挑戦。
また、山本氏は、企業の枠を越え、約50社1700名の若手が参画し、組織風土改革や事業創出に取り組む有志団体「ONE JAPAN」共同代表でもあります。
そもそもなぜ組織において挑戦が必要なのか?挑戦とは何か?
そもそも、大企業において「挑戦」とは、なぜ必要なのでしょうか。
電脳交通代表の北島氏は「新規事業や組織風土の改革などにより摩擦を生む可能性もある。その様なリスクもはらむ中、本当に挑戦する必要があるのかは考えるべき」だと言います。
大企業にとって挑戦が求められるシーンとは、収益の根幹である既存事業が、外部環境の変化によって将来的に衰退していく可能性があるような場合でしょう。
新しい事業ドメインにエントリーしていかなければならない、そうした危機感から挑戦が求められます。
しかし、組織においては変えてはいけないところと、変えなくてはいけないところがあるはずです。例えば既存事業のオペレーション担当は変わってはいけない場合もあります。
すべての社員に対して一律に挑戦を求めることで、混乱を招き既存事業の減衰を招く可能性すらあります。
まずは、「そもそも挑戦が必要なのか?」という根本を議論し、どの部署が、なぜ、いつまでに、どのような挑戦をする必要があるのかという与件を明確に定義することが大切です。
大手企業のイノベーションのジレンマ
〜組織の再現性とイノベーションをいかに両立させるのか?〜
変化の激しい事業環境やテクノロジーに適応するために、新しいことに挑戦しなければいけないと危機感を感じている方も多いでしょう。
ところが、組織にとっては、事業の安定性を高めるための「再現性」も重要な要素です。複雑な問題に対処するために、いかに業務を平準化できるかが組織マネジメントの重要な観点になります。
こうした「組織の再現性」の観点からすると、「挑戦者=標準化された枠組みからはみ出る者」でもあり、規律を乱す者として組織から排除される対象にすらなりかねません。
そんな中、「どのように組織の再現性とイノベーションを両立させるのか?」という「イノベーションのジレンマ」を抱えている人事担当者は少なくないはずです。
挑戦する組織を生み出した大手3社の事例
以下では、今回のイベント「社内挑戦者を生み出す組織風土の作り方」では登場しなかったが、既存事業を維持しながらイノベーションを生み出すことに成功した企業の事例を参考にしい企業事例を紹介したいと思います。
①:有志の社内挑戦者をコミュニティ化した「パナソニック」
世界27万人の社員を持ち、日本を代表する企業となったパナソニック。
パナソニックでは、社員のモチベーションの向上、知識・視野拡大、人脈形成を目的にして、熱い想いをもつ有志を集めて「One Panasonic」という社内コミュニティを作りました。
「One Panasonic」のメンバーの中では、会社を良くする方法や新規事業についての議論がおこなわれ、実際に新製品のプロトタイプが生まれたりもしています。
さらに「One Panasonic」を発足させた濱松 誠さんは、NTT東日本の社員である山本 将裕氏さんと共同で「ONE JAPAN」を結成し、パナソニックだけでなくNTTグループ、富士ゼロックス、IBM、リコーなど大企業50社1200人の有志メンバーを束ねる組織に成長しています。
「ONE JAPAN」の共同発起人であり、NTTグループでも有志団体「O-DEN」の代表を務める山本氏は「挑戦者とは、既存の組織の中では見えにくい部分があります。そもそも既存の枠組みの中で動くことを求められる組織の中で挑戦者は見えづらくて当然でしょう」と言います。
「会社をより良くしたい」「新しい事業を作りたい」といった内なる熱い想いを持っていても、共有できる環境がなければそうした想いを押し殺してしまうことになります。
山本氏は「挑戦者を生み出すためには、挑戦が許される環境を用意することが重要。挑戦者が『かっこいい』と言われる環境を作りたい」と話します。
「ONE Panasonic」や「ONE JAPAN」は、企業の組織の中で目立たずにいる内なる熱い想いをもったメンバーを炙り出し、挑戦が許される環境をコミュニティという形で実現している良い事例だといえるでしょう。
②:100社の子会社社長を生み出す「サイバーエージェント」
サイバーエージェントでは社内で新規事業を生み出す仕組みと文化が根づいており、子会社だけでも100社を超えています。
なぜここまで挑戦者が出てくるのかと言うと、既存事業での人事評価とは全く異なった評価を、新規事業担当に適用するダブルスタンダードを取っているためです。
サイバーエージェントでは、新規事業だけをやるチームを評価する仕組みである「スタートアップJJJ」制度というものもがあります。
営業利益によって事業を格付けするというもので、新規事業の成果を評価する項目はもちろん、利益の額によって「2四半期連続で減収減益になったら、原則撤退を検討する」という撤退ルールを設けるなどの工夫もされています。
このようにサイバーエージェントでは、既存事業のオペレーションチーム側の制度とは別に、新規事業に関わるメンバーに適用されるダブルスタンダードを用いることで、既存事業の運営と、新規事業へのチャレンジの両者を実現しています。
③:挑戦の機会を社外に広げ、あらゆる人に起業の機会を提供する「ソニー」
ソニーは2014年から、スタートアップ創出と事業運営を支援する新規事業創出プログラム「Sony Startup Acceleration Program(以下、SSAP)」を展開しています。
ソニーの場合は、「あらゆる人に起業の機会を」というコンセプトの元、ソニーが持つヒト、モノ、カネ、情報、技術、これらのアセットを社内のみならず社外の起業家に提供し、コラボレートすることで新しい新規事業や挑戦を生み出すという方法をとっています。
これまでに、ウェアラブルデバイス、IoTデバイス、スティック型のパーソナルアロマディフューザー、不動産テック、など様々な新製品、新規事業を創出しています。
このように、無理やり社内での既存リソースだけでイノベーションを起こそうとせずに、社外の起業家を巻き込む、オープンイノベーションという形を取ることも一つの手法として参考になります。
企業の事例を参考に、挑戦する組織を
ご紹介した3社のように、大手企業の中でもイノベーションのジレンマを乗り越え、挑戦者を生み出す文化や仕組み作りに成功している企業が徐々に目立つようになってきました。
挑戦者を生み出す方法論は100社100通りで、正解はありませんが、「挑戦の目的が明確で社員に浸透している」「挑戦者を後押しする環境が用意されている」「挑戦者が評価される明確な基準がある」「挑戦者同士が繋がるコミュニティが存在する」などの共通点がありそうです。
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